稲田弘さんをご存知でしょうか。現役のトライアスリートで、なんと86歳の世界王者です。
その稲田さんの講演会を聞きに、兵庫県加西市まで行ってきました。主催がトライアスロン協会ではなく加西市老人クラブで、タイトルもアクティブシニア講座。86歳という高齢になってもトライアスロンを続けられているというのは、当サイトの目標とするところですので、どんなお話が聞けるのか却って興味を引かれました。今回はその内容をご紹介します。
トライアスロンを始めた経緯
稲田さんについては、あちこちでプロフィールやインタビュー記事などが紹介されていますが、さらっとおさらいを兼ねてみてみましょう。
- 奥様の難病介護のため退職
- 自宅前にジムができたので運動不足解消のため入会
- スイムの練習に励んでいたところ、アクアスロン大会(※)が開かれたので仲間と一緒に出場(※スイムと長距離走を続けて行う競技)
- 参加のトライアスリートが会場に乗り付けたロードバイクを格好良いと思い購入(18万円位)
- 近所でレースが開催されたのをきっかけにトライアスロンを始める
- ロングのレース(五島アイアンマン)でゴール手前で時間切れ失格となった際、大会役員の人に来年も完走を目指すなら自己流の練習では限界があるからチームに入れと言われたのが今のチームに入ったきっかけ
ここですごいなと思ったのは、まずアクアスロン大会に出場されたことです。いくら泳げるといっても、わざわざ大会に出ようと思う人はあまり多くないのではないでしょうか。エントリー費を払い、会場まで出向かないといけませんからね。また、スイム会場は海のことが多いようですが、海で泳ぐのは怖いと思う人が多いように思います。一緒に出場する仲間がいらしたとのことなので、ここがポイントだったのかもしれないと個人的には考えています。
次に、ロードバイクを持っているからとトライアスロン大会に出場されたことですね。ロードバイクを買う時点ですごいですが、3種目できるからといって大会に出てみようとはなかなか思えないでしょう。これは、自分の周りの人の反応から思うことですが、トライアスロンが趣味というと、大半の人が「自分には無理」か「しんどいから絶対やりたくない」、「物好きな」といって驚かれます。
年齢など気にしないで、やってみたいからやる、やってみればできた、そういうことの積み重ねでここまでこられたということ、僭越ながらとても共感できました。管理人も、なぜか年齢を全く気に掛けない質でして、例えば何の運動もしていなかった30代半ばの時に100kmウォーキング大会に誘われた際、何の根拠もなくゴールできると信じて出場したりしています(リタイヤでしたが…)。
そういう、面白そうならとにかくやってみるという今の自分の方向性は間違っていなかったと確信できましたので、これからも大きなことから小さなことまで、気になることならなんでもやってみて、積み重ねていきたいと思います。
食事について
身体に必要な栄養素を摂るという考え方をされています。メニューのご紹介もありました。
- 朝食
- 鍋いっぱいに野菜スープを作っておく(豚肉入り:ビタミンB1が豊富なので)
- ライ麦パン
- 昼食
- 豚肉と麦飯のお弁当(練習中なのでコンビニご飯)
- 夕食
- 玄米
- 具沢山味噌汁をたっぷり
- 豆乳
- 納豆(発酵食品)
- キムチ(発酵食品)
- めざし(カルシウム)
- お酒は小さい缶ビール程度
これが一例と思いきや、食事内容は毎日ほとんど同じものだそうです。自分なりに考えたメニューながら栄養士さんのお墨付きがあるので問題ないとのことでした。なぜ毎日同じかというと、あれこれ悩んだり調理している時間がないためとのお話にはっとしました。
管理人は料理が下手で、いざ料理をしようとすると買い物から片付けまで、ものすごく時間を消費してしまいます。おそらく、下手でも嫌いではないので、楽しくてつい時間を掛けてしまうのではと思います。でも、料理の腕を磨く目標などがあるわけではなく、身体にいい食事を摂ることが今優先したいことですので、毎日、何をするにも時間が足りないと嘆くなかで、本当に意味のある事をしていくよう考える必要があると思いました。
練習メニュー
上述のチームにて、オリンピック選手や体育大学の学生と一緒のメニューをこなされているそうです。以下、チーム練習の様子です。これを隔日で週に3-4日、あとは自主練、1日は休みです。
- スイム練習が朝6時から
- バイク100km(他の人は午前中で終えるが稲田さんは15時ぐらいまでかかるそうです)
- ランを2km程度
時間は倍かかっても、距離は他のメンバーと同じだけこなされているということに驚きました。どこでもメンバー間の力量の差はありますが、その場合、遅い人の練習ボリュームを減らすことで、練習終了時間を合わせるのがこれまで見てきたパターンでした。
ですが、よく考えればレースの距離は速い人も遅い人も同じです。ロングのレース(スイム3.8km、バイク180km、ラン42km)の場合、特に長い距離を完走できる練習は必要になります。
チームメイトとの兼ね合いなどではなく、マイペースで自分自身に必要な練習をされるというのは、言ってしまうと当たり前にも聞こえますが、重要なことなんだと思いました。管理人は遅い部類なので、チームのようなところで練習した場合には、終了時刻を合わせるためにボリュームを減らされる側なのですが、それに甘んじていてはいけないと反省させられました。
また、この練習をずっとずっと継続されているということにも驚きました。上記の他に月一回合宿があるそうですが、きつくて大変と言いつつ、やはりやめずにずっと続けて参加されているそうです。
なぜきつい練習が続けられるのかというと、アイアンマンレースで風を切って走っているときに「生きている!」と実感できるからだそうです。レースのためには練習を惜しまないと。また、練習方法や走り方のフォームなどについて常に新しい情報を取り入れては試すそうです。それで、手応えがあったときや結果が出たときは本当に面白いと。毎日少しずつ上手になっていくんだとのことでした。
継続が大事と仰っていましたが、継続のためには大きな目標と、日々の楽しみや小さな達成感がポイントになると理解しました。また、毎日着実に積み重ねる、その努力があってこその世界王者のタイトルなんだと納得がいきました。
あと、8時間睡眠が必要なために就寝は21時と決められているそうです。管理人はつい夜更かししがちなのですが、それで起床が遅れ、朝やるつもりのことが夜になり、それで寝るのが遅くなり、と悪循環になっています。自分にとって本来の最優先事項は睡眠、次が朝のタスクですので、それを犠牲にしないよう、とにかくまずは就寝時刻を固定しようと思いました。
まとめ
現役世界最高齢トライアスリート、稲田さんの講演会で色々なお話を伺った中で、特に感銘を受けた点についてご紹介しました。
- まずは、できないと思わないでやってみること。
- 練習については、(内容ももちろんすごいですが、)大きな目標に向かって、楽しみながら取り組む。
- 生活では、食事や睡眠を大切にする。
いずれも、トライアスロンを長く長く続けるための、大切なヒントだと思います。この指針に沿って、マイペースでトライアスロンを楽しんでいきたいです。