トライアスロンというと、スイムでの死亡事故が取り沙汰されることがたまにありますね。残念ながら、毎年数件の事故が発生しています。また、ニュースにはならなくても、練習中でも事故の発生はゼロではありません。
この記事では、よくある事故の原因と、練習やレースの際の対策をご紹介します。体力に自信がある人など、自分だけは大丈夫と思いがちですが、事故に際しては被害者となるだけではなく、加害者となってしまう可能性もありますので、やはり一度事故について考えてみていただければと思います。
Contents
スイム
皆さんのご想像通り、3種目のうち、一番死亡事故の多いのがスイムです。トラブル発生時に咄嗟に呼吸ができないことが、更なるトラブルに繋がってしまうのではと思います。
万全の体調で
まずは、「体調不良」が原因の事故を防ぐために基本的なことを挙げますね。
- 前日に深酒しない
特に説明は不要でしょう。トライアスロンに限らず、マラソンでもなんでも、早朝からスポーツを頑張ろうというのに前日に飲酒は良くないです。 - 寝不足や体調不良をおして参加しない
こちらも、疑問の余地はありませんよね。 - レース直前に食事しない
身体に負担になりますので、遅くとも1時間前には食事は済ませておいてください。 - ウォーミングアップをさぼらない
心臓に急激に負荷を掛けないようにするため、試泳のときに予め充分心拍を上げておくのがいいです。バタ足をするのが、心拍を上げるのには効果抜群です。水温が低いとかものすごく混んでいて難しければ、泳ぐのに拘る必要はなく、その辺をランニングするのでも構いません。 - きつくなったり古くなったウェットスーツを無理に着ない
胸部を圧迫され過ぎたり、身体の動きを制限される、浮力に不足があるなどは危険です。
以上、どこでも言われていることかとは思いますが、改めて確認してください。
なお、個人的に難しいと感じているのは、レース直前に食事をしない、ということです。確かにあまり直前だとレース中にお腹が痛くなったりするのですが、かといって時間を空けすぎるとお腹が空きますし、あまりたくさん食べ過ぎてもやっぱりお腹が痛くなります。そこで、レース前の試泳に入る頃にプロテインバーやジェルを摂るようにしています。今のところこれで上手くいっています。
加害者にならないために
次に、「他人との接触」が原因の事故への対策を考えます。
レース時は基本的にクロールで泳ぎますが、少し休みたいとき、前方確認したいときなどに平泳ぎをすることもあるでしょう。このとき、周囲の人を蹴らないよう、充分注意してください。
キックの力というのはとても強力なので、人に当たった場合、悪気はなくとも、相当なダメージを与えてしまうことがあります。練習中ですが蹴られたことがあり、痛さとショックのあまり、思わずプールの底に足を着きました。これが海だったらと思うとぞっとしました。
スイムが苦手な人、途中で休みたくなる人は、立ち泳ぎも練習しておきましょう。平泳ぎの足を、後ろではなく下に向かって蹴るイメージです。これなら人に当たりにくいでしょう。立ち泳ぎが難しく感じる人は、浮くように、ではなく、沈まないように、と考えるとやりやすいかもしれませんので、一度お試しください。
水を飲んでしまったとき、足が攣ってしまったときなど、即座に沈むことはありませんので、落ち着いて、とりあえず立ち泳ぎに切り替えましょう。パニックを起こして、周りの人につかまろうとすると、相手を抑え込んでしまったり、逆に蹴られたりして、お互いに危険です。
プールでの練習中に水を飲んだり足が攣った場合は、練習が休めてラッキー、の前に、予行演習の良い機会だと思ってください。
(ちなみに管理人の場合ですが、子供の頃に水泳を習っていて、そこがスパルタ式でしたので、水を飲んだり足が攣ったぐらいでは許してもらえず、普通に練習を続行させられていました。従ってレースの時に足が攣っても、全然慌てることがありません。当時は厳しいコーチが恨めしかったですが、今となっては有難いような、複雑な気持ちです。)
苦手な人、いつも不安な気持ちを抱いている人に
その他、「準備や心構え」によって避けられる事故もあるでしょう。
レースの際は、予め、コースロープやブイ、ライフセーバーさんのボートなど、いざとなったらつかまれるところをよく確認しておくと心強いです。説明会で配布されるコース図にブイなどの大まかな位置が記載されているので、予習するのはもちろん、当日の朝に実際に見ておくと確実です。おまけ情報として、ライフセーバーさんに挨拶すると、大抵どなたも元気よく挨拶を返してくれて、すごく心強く思えますのでお勧めしておきます。
混雑するポイントを避けるのもよいですね。スタート時の先頭付近や折り返しのブイ付近などが相当するかと思います。
- 泳いでいるうちにうっかり混雑に巻き込まれた場合
自分が集団に追いついた形の場合は、その外側を迂回するコースを選べるとベストです。逆に後ろから集団にのまれた場合は、速い人が勝手に追い抜いていってくれるはずですので、落ち着いて真っすぐ泳ぐことを心掛けてください。 - 折り返しのブイに近付きすぎた場合
内へ内へ押されてコースアウトしてしまうことがありますので、ちょっとペースアップして早めに抜け出せると安心です。
制限時間を把握しておくのも有効です。思うようにペースが上がらない時でも、まだ時間に余裕があると分かれば、一旦休憩してから落ち着いて泳ぎ出せるでしょう。
また、どうしてもしんどければ邪魔にならないところで仰向けになって浮くのもありです。ウェットスーツは浮きますし、仰向けなら呼吸が確保できますね。まだレース中にやったことはありませんが、いつでも実践できるように、練習でウェットスーツを着る場合には仰向けで浮く練習もするようにしています。
もしライフセーバーさんから声をかけられたら
覚えておいてほしいのですが、ライフセーバーさんが声をかけるのは、明らかにきつそうだったり、様子のおかしい人です。その場合は決して無理をせず、リタイヤを考えてください。無事に帰宅できれば、レースはまた今度出られますので。
バイク
レース中の死亡例は記録にないようですが、スピードが出るため、落車(※)が大怪我に繋がることはよくあります。また、練習は公道で行うことが多いため、自動車がいる分レースより危険です。
※「らくしゃ」と読みます。走っている自転車から人が落ちることをいいます。
キープレフトとまっすぐ走ること
バイクでは、大会中でも公道走行時でも、キープレフト(※)とまっすぐ走るのが基本です。
※キープレフトという言葉はシチュエーションにより色々な解釈があるようですが、レースにおいては文字通り、左に寄って走るということです。公道なら、基本的に一番左端の車線を走るということ(車両全般についてのルールですが)。加えて、無理のない範囲で更に左寄りを走るよう心掛けると、他の自転車や自動車との無駄な軋轢を生まなくて済むようです。
後ろから見ていて気になるのは、まっすぐ走ってはいるけど左に1台分ぐらい隙間のあいている人、ふらふら走る人、だんだん真ん中に寄ってくる人、などなど。いずれも、右側のスペースが狭くなり、後から来た人が追い抜くときに危険です。
あと、後ろをものすごく気にして、しょっちゅう振り返る人もいますね。他の人より遅いことは問題になりませんので、自信をもって前を見てまっすぐ走ってください。遅ければ、速い人が勝手に追い抜いていきますので、その邪魔にならないことが大事です。
前をよく見る
路面の状況はもちろん、前を走る人の様子も気にしておく必要があります。まっすぐ走れない人が前にいる場合、誰かに追い抜かされる際に接触→落車となるかもしれません。そうなると自分も巻き込まれる恐れが出てきますね。そういったことを予測して、まっすぐ走れない人とは車間距離を充分取るなど、警戒しておくのは有効だと思います。
あと、一度あったことですが、前の人のバイクからカタカタ変な音がしていると思ったら、ツールバッグの口が壊れて、中身の工具やポンプが路上にばら撒かれました。咄嗟に避けましたが、一歩間違えばタイヤで踏んで落車していたと思います。たまたま前もって異変を感じ取れていたのがラッキーでした。
こういったこともありますので、変な音がした場合は何かが起こると仮定していつでも減速できるようにするとか、いざとなったら避けられるように周囲の状況をチェックしておくとか、そうしたことが事故防止につながるのではと思います。
また、加害者にならないために、バイクの整備(ツールバッグの取り付けなども含め)をきっちり行うというのも重要です。
下り坂では減速する
下り坂が怖いという人は、単純にスピードの出し過ぎです。しっかりブレーキをかけて、自分のコントロールできるスピードで走りましょう。
なお、バイクがとても上手な人に言われたのですが、下りが怖いので下りの練習をしようというのは間違いだそうです。というのは、結局のところ重心移動が上手くできていないから怖いのであり、つまりはバイクコントロールが下手くそなのであると。平らで安全なところで、基礎練習をきっちりやるようにとのことでした。
もうひとつ、下り坂が怖いのは、先の見えないカーブとの組み合わせが多いからではと思います。カーブを曲がった先に何があるかは分かりませんので、やはり充分な減速が大切です。
雨の日の経験を積む
雨の日にバイクに乗るのが好きという人はあまりいないと思います。濡れるし、レインウェアを着るのは面倒だし、ブレーキは効かないし、バイクが泥んこになって洗車が大変だし・・・。
どれも分かります。でも、雨ならレースは棄権するぜという人以外は、是非雨の日に練習をしておいてください。
特に、ブレーキの効かなさ具合と、視界の悪さについてしっかり確認してください。
アイウェアの表面が水をしっかり弾いてくれればいいですが、びっしり水滴がついてしまうものもあります。また、裸眼だと当然雨が目に入りますね。管理人の対策としては、
- サイクルキャップのつばを前にしてヘルメットの下に被り、雨避けにする
- シールド付きヘルメットを使用する
となります。特に後者は、シールドをさっとなでれば水が払えますし、顔があまり濡れないのもメリットだと思っています。
あと、路面がとても滑りやすくなっているので注意が必要です。特に避けたいのは、マンホールの蓋やグレーチングですね。道路標示のペイントも鬼門です。でもだからと言って、それらを急ハンドルで避けようとするとバランスを崩すおそれがありますし、周囲の自転車や自動車と接触するかもしれません。
(子供の頃の話ではありますが、ママチャリに乗っていて、マンホールの蓋で滑って転び怪我をした苦い思い出がありますので、よりスピードが出る上により高価な機材に乗っている皆さんには、是非とも注意していただきたいですね。)
よって雨の日は、
- ブレーキの効きが悪いことに留意する
- 雨避けの庇やシールド等で視界を確保する
- 予め先の路面を見通して、マンホールや道路標示を踏まないようコースを考える
など、普段の何倍も神経を遣うことが事故防止につながると思います。
ラン
ランでの死亡例はスイムに比べて圧倒的に少ないですが、原因の大半は熱中症であるようです。レースが真夏に開催されることが多いので、あまり意外ではないかもしれませんね。練習なら、早朝や夕方の涼しい時間を選べますが、レースは日中に実施されますので、しっかり対策したいところです。
水分・ミネラルの補給
ランの前の種目はバイクですが、そのバイクが終わるまでに充分な水分を摂れるかがポイントです。理由は、ランではエイドステーションでしか給水できないこと、バイクの方が姿勢が安定していて給水がしやすいこと、があるかと思います。
あとよく言われるのは、喉が渇いたと思った時にはもう遅い、ということですね。早め早めの水分補給を心掛けたいものです。ランパートに至るまでの水分補給のチャンスは、
- レーススタート前
- スイム後のトランジション
- バイクパート中
- バイク後のトランジション
とたくさんあります。
摂るべき水分量の目安について。体格により必要量も変わるでしょうが、ある大会では、事前に経口補水液のペットボトルが配布され、それと各自持参したボトル1本は最低限飲み切ること、との説明がありました。合わせて1リットル~となります。
ちなみに、オリンピックディスタンスならバイクは40kmですので、所要時間としては1~2時間となります。水分補給のペース配分も考えるといいですね。管理人の場合は、コースにもよりますが、10分おきにとかコーナーを抜ける毎にとかルールを決めてボトルを手に取るようにしています。
ミネラルの補給も重要です。エイドステーションで提供されたものとしては、塩タブレット(噛むととんでもなく塩辛いので丸呑みしていました)、塩(指でつまんで舐める)、梅干しなど。苦手でも避けないようにするか、または、バイクに積むドリンクや補給のジェルなどでミネラルを補給できるよう、自分で準備をしましょう。
身体を冷やす
水は、飲むだけでなく浴びるのも有効です。エイドステーションで水をもらったら、顔や首筋、手足などにも掛けましょう。ホースやひしゃくなどで、水を掛ける用意をしてくれている場合もあります。その場合は、お願いしますと言いながらキャップを取って駆け寄ると、大抵察してくれますよ。
なお、できれば足元には掛からないよう気を付けましょう。シューズが濡れると、重くなったり靴擦れしたりと、あまりいいことがありません。(といっても、レース中なのでそんなに細かい注文は付けていられないのが実情ですが・・・)
直射日光を避ける
キャップを被り、アイウェアを着用するのが基本ですね。トライウェアは基本的に肩が大きく露出しているものですが、最近は半袖のものが流行りですので、そういったものを導入してもよいかもしれません。アームカバーを利用したり、長袖のUVカットインナーや、ボレロ(丈の短い上着)を着用する人もいます。いずれも、運動に際し何か不都合がないか、練習の際に確認しておくとよいですね。
敢えて暑い中で走っておく
普段涼しい時間帯に練習している人は、敢えて昼間に走ることで、暑さに慣れる練習もしておきましょう。日に焼けると体力を消耗しますし、熱中症になってはいけませんので、日焼け対策は入念に行ってください。
夜間の練習について
夜、すっかり日が落ちてから走るという人も多いと思います。照明が充分明るければ問題ないですが、コース上(自宅からの往復も含めて)に暗いところがあるなら、是非ご自身を目立たせる工夫をしてください。
夜目が利くから大丈夫、ということではなくて、周囲から認識してもらうためです。夜に大阪城公園を走っていた際、出会い頭に他のランナーと衝突しそうになって以来、目立つことの重要性をとても意識するようになりました。
対策としては、ウェアやシューズ、ポーチなどに反射テープがあしらってあるものを導入するのが手軽で良いですね。お勧めは、アームバンド式のLEDライトです。これならウェアを選びませんし、反射でなくそれ自身が発光するため、かなり視認性が高いです。
まとめ
トライアスロンでよくある事故と原因、その対策をご紹介しました。
練習の際には異常事態の想定と準備を、本番のレースでは事態発生を回避するよう努めることで、なるべく事故を遠ざけられるのではないでしょうか。また、誰でも意図せずとも加害者になり得るということも、念頭に置いていただければと思います。
事故のない、楽しいトライアスロンライフを皆で目指しましょう。